Loveずっきゅん

今日クルマでFM802聞いてたら流れてきたこの曲、昨年あたりからネットで話題だったらしいがまったくしりませんでした。女声ボーカル4人組ロックバンド、相対性理論の曲。下記で無料ダウンロード可。

http://www.mf247.jp/?gr2_id=00000000000000000000000529250013

CD-Rのミニアルバム(500円!)が売れ過ぎてすでに廃盤らしく、再発が決まったらしい(そのプロモーションでFMでもかかるようになったんですかね)。アマゾンでも予約受付中。1000円。正しくインディーズな展開ですなあ。

シフォン主義

シフォン主義

人を喰ったプロフィールとタイトルに文化系ロックの明日を感じさせるバンドである(もうすでにmixiのコミュは1000人越えてますけど)。

これ、初音ミクのバージョンがニコニコ動画にあがってる。聞き比べてみると面白い。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1279033

初音ミク以降のポップミュージックのあり方にはたぶん二つの差異化の方向があって、ひとつはPerfume型というか、音楽の水準ではなく現場のパフォーマンスの総体(あの驚異的な振り付けだけでメシ三杯はいける、的な)にアウラを担保させる方向が考えられる。たぶんこれは(まったく音楽性は異なるが)マイケル・ジャクソンやマドンナを嚆矢とするものであって、MTV的なメディア環境のコンテクストの中で育まれてきた「口パクでも構わないポップミュージックの意匠」の系譜に属するものだ。フレッド・アステアを敬愛するマイケルにとってはたぶんそれは副産物であって(おそらく彼の意識の上では、舞踊や演劇のようなブロードウェイ的な伝統の上に自身の活動を位置づけているのではないかと思われる)、マドンナこそがおそらくそれにもっとも自覚的なミュージシャンなのだろう。

ベスト・ヒット・コレクション [DVD]

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これ所収の90年のMTVアワードでの「ヴォーグ」の"ライヴ"は必ずポップ音楽史の授業で見せるものの一つなんだけど、ここまで「見せ物としてのポップミュージック」を構成する最小のファクターについて自覚的で、それを徹底してつきつめたパフォーマンスはそうそうお目にかかれない。おそらく、われわれをPerfumeに惹き付けさせているものは同様に、音楽それ自体ではなく(それは容易にテクノロジカルに再構築できる―あるいは再構築の可能性をもつ―のだから)取り替え可能な音楽をエクスキューズとするなにがしかのアウラ的見せ物の技なのだ(もちろんだからといってPerfumeがつまらないわけではなくその逆だ。これほどまでにポップミュージックのアウラの文脈を自覚的に再構成したミュージシャンというかプロジェクトがこれまであっただろうか。彼女らはマドンナの文化産業臭を取り去って、見事にCGM的なというかインターネット以降の能動的受容者の類型に適合的なポップ・パフォーマンスの様式を産み出した。おそらくはピチカート・ファイヴができなかったそれ、であろう)。

で、今日聞いた相対性理論はそのもうひとつのあり方、初音ミクで代替できないポップミュージックのもうひとつの側面(音楽内在的な)の今後の方向と展開とを預言するようなものと思えてしかたがない。ようするに「汎用的な媚態」をテクノロジカルにコントロールできるようになったのならば、そのような媚態を生身でバージョンアップさせるというか、あらかじめビルトインされた媚態を再度シミュレートしつつ不断にパロディ化していくような、そういう役回り(それは必然的に一時的な「流行」としてしか存在できないのだが)を自覚的に果たすことこそが、これからの人力バンドに要請される機能なのかもしれないなあとしみじみ思ったわけなのです。そのあたり、例えば椎名林檎とかが自覚的に開拓した媚態が結局は「歌う個性はプロの世界に属するからこそエラボレートされるわけよ」的な、専門職的な文脈に依拠していた(せざるをえなかった)のとはずいぶん様相を異にしているように思う。大塚愛の美点のみを濃縮しながら同時にそれを鼻で笑うような「Loveずっきゅん」のコーラス部分を聞いていただければわかると思うが(というか多分に感覚的な根拠でしかないので同意いただけるとは思わんのですが)、このバンドが見ているのは、初音ミクのような媚態のシミュレーション技術を誰もが利用しうる(つまりは参入障壁が格段に低下した)時代に、そのシミュレーションを再度人力でシミュレ−ションしながら(あたかもドラムンベースを人力で演奏したズボンズのように)「人のできることなんてしょせんこんな程度なんすよ」とへらへら笑いつつ、機械が生きることの出来ない生を「実際に生きる」ことを目指すような、そんな境地なのだろうと思う。というか妄想ですね(笑)。いずれにせよ、ネット発という流通面の新奇性も含めて見るといろいろ面白いことが言えそうなバンドだと思います。たぶんブログ界隈では受けるよなー。文部省謹製的スペックの中村中よりは(笑)