忙しいがこれだけは言っておきたい。

吉川潮『江戸っ子だってねえ 浪曲師廣澤虎造一代』(新潮文庫江戸っ子だってねえ―浪曲師広沢虎造一代 (新潮文庫)
軽い気持ちで読み始めたらこいつがとまらない。不世出の昭和の名人、二代虎造の一代記。戦後のニューヨーク公演の時サッチモを見て「俺と一緒じゃねえか」と思う下りなど、「日本におけるブルースの社会学的対応物としての浪曲」説の傍証ともなろう。あとマイクロフォンの登場(昭和12年)以降、声量の乏しかった虎造の美妙な語りが逆に人気の起爆剤になるなど、複製技術時代の大衆音楽としての浪曲を考える上で興味深いエピソードが満載。いやそんなことはどうでもいいですな。裸一貫からのしあがった虎造の気っ風と義理人情と男っぷりをこそ読むべきでありましょう。JBやマイルスと比較しつつ。
面白いミュージシャンの伝記を物色しているというid:gotanda6さんにもぜひお勧めです(笑)