キリンジ『3』asin:B00005HNZ1
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このところ2ヶ月くらいに読んだ本(2)


加藤秀一『〈恋愛結婚〉は何をもたらしたか』(ちくま新書ISBN:4480061878
 最初は問題意識がうまくつかめなかったが、恋愛思想の土着の過程と優生思想の絡みが明瞭になってくる真ん中あたりから俄然戦慄しつつ読了。「人間を新たに存在させること」と「人間が最大限自由に交流すること」が功利的に背反しうる可能性が、生殖技術の発展によって明確につきつけられる現在(これは「法の完全実行」と同種の問題系として考えることもできよう)をどう「生きるか」は、抽象的な問題ではなく私にとっての具体的な問題である。オレ、自分の子供を欲しいのだろうか? それはなぜか? 


・三井徹(編訳)『ポピュラー・ミュージック・スタディズ』(音楽之友社ISBN:4276230020
 ポピュラー音楽研究に関心を持つ者、必携。Continuumから一昨年来刊行されている、初の包括的ポピュラー音楽研究事典の抄訳。ま、Popular Music Studiesにおける『ニューグローヴ』的なものだと言ってよいだろう。ユニークなのはABC順ではなく、テーマ別編集になっていること。『スタディズ』の原本である第1巻(Media,Industry and Society)は社会学、人類学、音楽学、批評理論、現代思想、ポストコロニアリズムなど、ポピュラー音楽研究の研究史を構成する関連領域からこの分野の現状を検討すると同時に、産業やメディアに関連する諸トピックを俯瞰する内容となっている。抄訳されたものは研究史部分で、ニーガス『ポピュラー音楽理論入門』ISBN:4891765208、この研究分野が背景にする英米圏の理論的な文脈はほぼ完全にカバーできるだろう。いやーほんとに今の学生さんは幸せですよ。早く買わないと売り切れてしまう恐れがおおいにありそうな気がします。
 三井先生は周知の通り日本のポピュラー音楽研究の先駆者で、その学恩に浴する研究者は数多い。私がいまあるのもひとえに三井先生のおかげである。この三月で金沢大学をご退職された。5月21日には東大でピーター・バラカン氏との対談(佐藤良明氏司会)と、退職記念論文集の刊行パーティがある。マスダもその末席を汚させていただいておりましてその節は本当に申し訳ございません申し訳ございません…。当日は実働部隊として働きまくり呑みまくりますので、ご迷惑平にお許しを。