名和先生よりご恵投賜りました(ありがとうございました)。
名和著作権論の(例えば『ディジタル著作権』の)まさしくヴァージョン2.0という趣。いぜんと同じ鋭い考察やおもろい事例も自己サンプリング&リミックスしながら、より現状にフィットして使い勝手が増した、しかもヴァージョンアップしても従前通り読み心地軽快(笑)といいますか。とくにこの本では、グーグル・ブックサーチという00年代後半の具体的事例が、これまでの名和先生の投機的speculativeな議論をなぞるようなかたちで出現したかのようにすら思えてくる。おそらくは音楽や映像といった複製芸術の著作権問題は結局ククク…やつらはメディア四天王のうちの新参者にすぎん、所詮は雑魚よ…といわんばかりに、copyright制度が要請されることとなった直接の契機である印刷技術のヴァージョンアップこそが、おそらく幾多の著作権をめぐるおしゃべりの有効性をテストする格好の対象となるのでありましょう。学術情報の公共性とそのスポンサーとか、図書館の理念とか、これまでの著作権論者が周縁的とみなしていた問題系にこそ重点を置いてきた名和著作権論の現在の射程をありありと示す一冊。とにかく面白いです(まあ名和先生の本で面白くない本はないという読者の評ですからその辺差し引いてご判断あれ)。2ライブクルーの「プリティ・ウーマン」サンプリングがフェアユースになった件(これ日本のDJ著作権まわりの議論であまり言及されない気がするんだけどどうしてかなあ)も、日本の公正使用が現実化しそうな現状踏まえて再論されているが(183-188頁)これがまたスリリング。パクリ概念と絡めて要再考。個人的には、先生が口頭でいつもおっしゃってた「著作権審議会の議論では、昔はビジネスとか言うと叱られた(著作権法は文化に関する法制度であって経済とは無縁、とするエートスが根強かった)」エピソードが活字化されてる(131頁)のがありがたい。いつだったかが知りたいんだけどやはり思い出されておられないようでしたが…(笑)。まあたぶんアメリカのベルヌ加盟とかTRIPSとか以前の話(80年代末頃)とは推定されるけど。